香港のデザイン誌、Xプレスマガジン「エレメンチズム2」記事掲載

香港デザイナー協会が発行。2004年1月香港での「エレメンチズム2」発売記念トークの様子が紹介されました。ホンラム氏の紹介や杉崎真之助のエッセイなど。

エレメンチズムそして エレメンチズム 2
香港 Xプレス マガジン 8号
文 杉崎真之助

はじまり

3年前、大阪で Hung Lam の作品を初めて見たとき、彼の作品の中に表面的な表現ではなく哲学的で本質的な思考があるように思えました。そのような理由から、彼がなぜ私の作品に興味 をもったのかを知りたいと感じました。一年後、彼は私の事務所に2ヶ月ほど滞在することになりました。

その期間、私はあまり流暢でない英語で彼と対話しました。彼は日本語をほとんど話しません。そして私は広東語を理解できません。うまく考えが伝わらない時 は、コミュニケーションの不足を補うために、共通の文字である漢字がしばしば使われました。また漢字そのものが話題のテーマとなることもよくありました。 結果的には言語によるコミュニケーションの困難さが、我々の対話を表面的な話題ではなく、より本質的で哲学的ななものにしたといえます。

彼と私の対話はとても想像力を刺激する創造的で、しばしば時間を忘れるほど楽しいものでした。私の作品や仕事を話題の起点にして、大阪と香港、日本と中国、その共通項と違い、そして漢字、文化、歴史へと大きく広がっていきました。 だから、彼が Elementism という作品を媒体として大阪あるいは日本を研究することにしたのは、 彼にとって、そしてまた私にとっても、とても自然な成りゆきであったと思います。

文化、言語、世代

お互いの年代、それに文化や歴史の背景、言語の違いがあったからこそ、年齢や経験をこえた、本質的な関係を構築できたのではないでしょうか。真っ白い地図 のなかに二人で自由に道を描くことができたのです。共通性と違いを認識していく過程そのものが日記になり、そして Elementism2 につながっていきました。彼は事務所を起点として、クリエイターだけではなく、いろいろな世代のいろいろな職種の人たちと交流しました。その日常から概念 的ではなく実際的な大阪の文化や歴史を読み取りました。

Elementism の element は化学の元素という意味を持ちます。私のこの作品には分析的で自覚的な概念は提示されていません。ある側面から見ると、私が提示したものは器であるといえます。そして彼がその上に diary という料理を盛りつけたのです。そういうわけで、Elementism という旅のパズルはElementism2 の出版により、完成したのかもしれません。

アジアのクリエイティブ

デザインはグローバル (global) な言語です。しかし、自分の場所、地域を意識することをさまたげるものではありません。早川良雄さんや田中一光さんといったデザインの先達 (pioneers)は西洋から、デザインという考え方を学びました。そしてそれを自分たちの文化、歴史、様式に取りこんでいきました。そのことでデザイ ンを自分のものにしたのです。

言うまでもありませんが、漢字は、中国および中国語エリアだけでなく日本を含む東アジアの地域的な特質(identity)を与える重要な資源だということができます。 私は、若い世代の国際的で現在的な表現をとても肯定的に見ている一人です。しかしまた、「漢字」をはじめ、ハングル文字」や日本の「かな文字」など固有の文字を使った、素晴らしいタイポグラフィが若い世代から、たくさん出てくることを期待しています。